ギリシャ神話における、世界の始まり(創造神話)
世界の始まりについて描かれている神話のことを「創造神話」と言います。
キリスト教やイスラム教のように「神はひとり」とする一神教の神話では、創造神話はシンプルで、神が世界を造ったというスタイルです。
しかしギリシャ神話は多神教の神話なので、創造神話もさまざまな神が登場します。
今回はギリシャ神話の世界の始まりについて、まとめたいと思います。
ギリシャ神話の世界の始まりは「カオス(混沌)」
ヘシオドスの「神統記」によると、世界の始まりは「まずはじめに、カオス(混沌)が生じた」とあります。これは、「カオス」という神がいたということなのか、それとも最初、世界はすべてが混じり合って分かれていない世界であったという意味なのか、諸説あります。
このカオスを始まりとして、次々に神々(と世界)が生まれていきます。
大きく分けると、カオスから生じた神々があって、次にガイアから生じた神々が続きます。
カオスからの系譜 |
1.大地ガイアと奈落タルタロス、愛の神エロースが生まれる 2.暗黒(エレボス)と夜(ニュクス)が生まれる 3.光(アイテル)と昼(ヘメラ)が生まれる |
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ガイアからの系譜 |
4.天空神ウラノスを単体で生み出す 5.高い山々と海(ポントス)が生まれる 6.天空神ウラノスとの間に、ティタン神族が生まれる |
このように、ギリシャ神話では、カオスとガイアから、神々と世界の構造が生み出されていったのだとされています。ガイアとウラノスの間に生まれたティタン神族については別の記事で詳しく書いていますので、そちらもご参照ください。
ギリシャ神話の最初の神(原初神)は?
ギリシャ神話の中で最初に生まれた神は、「大地ガイア」「奈落タルタロス」「愛の神エロース」です。
ガイアは「大地」であり、その後もギリシャ神話の中に度々登場する神です。
タルタロスは「奈落」(地獄)であり、ハデスが支配する冥界よりもさらに深い場所を指し、いかなる力も無力化させることができるために、多くの神々や怪物や巨人たちが幽閉されました。時に、場所ではなく、神様として表現される場合もあります。(ガイア(もしくはタルタラ)との間に怪物テュポーンをもうけています)
原初神としてのエロースは、一般的に「キューピッド」と言われる背中に羽のある赤子や青年の姿の神ではなく、「愛」という抽象的な存在、ひとの根源的な感情の力のことであって、神様としての神格はありません。
エロースの誕生には、原初の神であるという説と、軍神アレスと愛の神アフロディテの子どもであるという説(こちらがいわゆる「キューピッド」)の説があります。
ギリシャ神話は、様々な語り手が口で語り継いできたものです。そのため、一貫していない点も多くあります。その諸説あるところを楽しむくらいの気持ちで読むことが、ギリシャ神話を楽しむコツだと思います。