ギリシャ神話のミダス王とは?

「王様の耳はロバの耳」はもともとギリシャ神話

イソップ童話のひとつ、「王様の耳はロバの耳」の元ネタは、ギリシャ神話のミダス王の神話が元になっています。
あまりに有名な童話ですが、ギリシャ神話のミダス王の神話には、更に詳しい伏線と削られているエピソードがあるお話なのです。

そもそも、「王様の耳はロバの耳」とはどんなお話?

昔々あるところに、いつも大きな帽子をかぶっている王様がいました。帽子の下は、王様の髪を切る床屋しか見たことはありません。しかも、これまで何人もの床屋が呼ばれましたが、王様の髪を切りに行くと、誰ひとり帰ってきませんでした。ついに国の床屋は、ある若い床屋とそのおじだけになってしまいました。

若い床屋がついに城に呼ばれました。王様の髪を切るために、帽子を外すと、その下からロバの耳が!王様の耳は、ロバの耳だったのです。若い床屋は、ここでなにか言葉を発すれば返してもらえなくなると思い、必死にこらえて何も言わずに髪を切りました。髪を切り終わったあと、王様は彼に問いました。「なにか変わったことがあったか?」若い床屋は「何もありませんでした」と答え、王様は「見たことは絶対外で話すな。話せば命はない」と言って、城から床屋を返しました。

床屋は、王様の耳がロバだったことを話したいのに誰にも話せず、苦しくなってきました。そのうち、お腹が膨れ始めました。医者に見せると「黙っていることがあるから、お腹が膨れる。しゃべれば、しぼむだろう」と言われます。若い床屋は、森に入り、深く穴を掘り、その穴に向かって叫びました。「王様の耳はロバの耳!王様の耳はロバの耳!・・・」お腹はみるみる引っ込んで、元のお腹に戻りました。

床屋が掘った穴には、種が一粒落ちていました。その種は、芽を出し、成長して一本の木になりました。ある羊飼いがその木を使って笛を作ると、その笛は「王様の耳はロバの耳~」と鳴りました。羊飼いは面白がって、それを吹きながら、街中歩き回ったために、王様の耳についての噂は街中に広まりました。王様は床屋と羊飼いを呼んで事情を聞きます。床屋は誰にも話していない、穴に向かって叫んだだけだと主張します。王様は、「自分の耳のことはもう街中に広まってしまったから、隠しても無駄になった。これからは隠さずに堂々と生きよう」と、なにもせず二人を返しました。

というのが、イソップ童話の「王様の耳はロバの耳」です。
同様の内容のお話が、インドなど他の地方にも見られるようです。

実はロバの耳になる前の話のほうが長い!~ミダス王の「黄金の手」から、ロバの耳になるまで~

そもそも、どうして王様の耳がロバの耳になったのか、そこはイソップ童話には出てきません。ギリシャ神話のミダス王のお話には、耳がロバになった経緯のほうが、詳しく登場します。

ミダス王は、プリュギア(現在のトルコ中西部)地方の王でした。
ある時、王は、デュオニュソスのインド遠征の軍からはぐれたシレノス(半人半山羊(もしくは半人半馬)の自然の精霊。サキュロスが歳を取るとシレノスになるという説もあり)と出会い、彼を歓待し、軍に送り届けます

これに感謝したデュオニュソスは、ミダス王に何でも望みを叶えてやろうと言います。そこでミダス王は「自分が触れるものすべてを黄金変える力」を求め、デュオニュソスはそれを叶えます。

黄金に変える力は、王を経済的に豊かにしますが、触るものすべてが黄金になってしまうため、食事を取ろうにも、触れた食べ物は黄金に、水すらも黄金がとけたものにかわってしまい、全く何も口にすることも出来ません。さらには大事な愛娘にうっかり触ってしまい、彼女も黄金の像になってしまいます。ミダス王は、デュオニュソスにこの能力を返したいと訴え、デュオニュソスもそれを聞き入れ、パクト-ロス川で体を洗うように言います(このため、パクト-ロス川では砂金がよく取れるのだと言われています)。

それ以降、ミダス王は富を嫌い、信仰も牧神パーンを崇拝するようになります。(アポロンに音楽勝負をしたサキュロスのマルシュアスを崇拝していたとの説もあります)

またある時、崇拝するパーンと光明神アポロンが音楽対決をすることになりました。勝負の結果は、アポロンの勝利。しかしその勝負を見ていたミダス王は「いや、パーン様の演奏のほうが素晴らしかった」と自分の意見を曲げませんでした。それに怒ったアポロンは「そんな耳はロバの耳になってしまえ!」とミダス王の耳をロバの耳に変えてしまいました。昔はロバは「のろまで、愚かなもの」の象徴とされていた動物でした。

ここからは、イソップ童話の内容になっていきます。最後は、床屋たちを罰さずに返したミダス王をみて、アポロンが普通の耳に戻してやったという話もあるようです。

ミダス王の神話では、「黄金の手」の話も有名です。
触ったものをすべて黄金にする「マイダス・タッチ(Midas touch)」という言葉は、何でも金に変えてしまう能力として、機会を捉えて利益を得ることに長けたひとを表現する際に使われます。また、歌手ブルーノ・マーズは「ポップ界のミダス王」とも言われていて、彼が手掛けるとどんな音楽もすばらしいポップになるために、そのニックネームで呼ばれています。
このように、ミダス王の神話は「王様の耳はロバの耳」以外にも、現代の世界に息づいているのです。

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