ギリシャ神話の運命の女神

ギリシャ神話の運命の女神

ギリシャ神話における運命の女神テュケーとネメシス

テュケーは都市の財産と繁栄、運命を司る女神。「テュケー」とはギリシャ語で「運」という意味です。テュケーの出自はいくつか説があり、ヘルメスとアフロディテの子どもという説、オケアノスとテテュスの子どもという説などあります。

もうひとりの女神、ネメシスは、よく「復讐の女神」と訳されることが多いようですが、これは間違いで「義憤の女神」が正しいようです。人間が起こす神々への無礼な行動に対する神の憤りと罰を擬人化した女神ですが、ひとに幸不幸を分配する役目もありました。また、テュケーが有り余る運をひとに分け与えたときに、バランスをとるためにネメシスはマイナスの出来事(不運)をそのひとに与えるという役目だったとも言われています。

ギリシャ神話の運命の三女神モイライ。クロートー、ラケシス、アトロポスの三人。

「モイライ」とは複数形で、単数だと「モイラ」となります。モイライの三人、クロートー、ラケシス、アトロポスは人々の運命の内容を決定し、割り当てる役目を担っているとされていました。
長女クロートーは「紡ぐ者」。闇から生じる運命を糸として巻き取ります。この糸の太さや色によって運命が変わります。次女ラケシスは「測る者」。ラケシスはクロートーが決めた運命をそれぞれの人に割り振ります。クロートーが巻き取った糸を束にして長さを決め、それを誰の運命とするか決めるのが役目です。三女アトロポスは「曲げられない女」「不可避の者」という意味です。彼女はハサミを持っていて、姉たちが紡ぎ、束ねた糸を断ち切るー「死」を決定する役目を担っています。

ギリシャ神話の運命の女神モイライ、意外と強くてしたたか

運命の女神たちも神々の戦いに参加しています。しかもかなり強いです。

オリュンポスの神々とギガース(巨人)との戦いであるギガントマキアでは、アグリオスとトオンというふたりの巨人を青銅の棍棒で殴り倒しています。ギガントマキアでオリュンポス12神以外でギガースを倒したのは、モイライと冥府の女神ヘカテーのみです。

また、最大最悪の怪物テュポーンとの戦いでは、ゼウスを追い詰めたテュポーンがとどめを刺すために、モイライを脅し、彼女らの持つ「何でも願いをかなえる勝利の果実」を得ようとします。モイライはテュポーンに従うふりをして「勝利の果実」ではなく、「望みが決して叶わない不常の果実」を渡し、テュポーンの力を無力化します。アイテムの力とはいえ、ゼウスを追い詰めたテュポーンの力を奪ってしまうとは、かなり強力であり、また脅されていながらも冷静に怪物を騙すとは、かなりのしたたかさをもった女神だと思われます。

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