ギリシャ神話のパンドラとは?
ギリシャ神話のパンドラとは、次のとおりです。
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パンドラはひとに災いを与えるために送りこまれた存在です。そうなった原因は、プロメテウスが、天界の火を盗み、ひとに与えたことでした。ゼウスはひとに火を与えることを禁止していました。しかしプロメテウスは、闇を恐れ、寒さに震え、加熱技術がなく病気で死んでいく人々を見て哀れに思い、天界から火を盗み、ひとに与えてしまったのです。
ゼウスの怒りは、相当なもので、プロメテウス自身に厳しい罰(誰も来ない岩山に縛り付け、毎日脾臓を大鷲に食べられる)を課すだけでなく、火の恩恵を受けたひとにも災いを与え、さらにプロメテウスを追い込もうとしたのです。
そのための刺客が、ひとりの美しい女性、パンドラでした。それまで人には女性という存在はありませんでした。ゼウスは、神々に命じて、最上の女性を創り上げます。パンドラの名は「パン」=すべての、「ドーラ」=贈り物という意味です。
神々からパンドラへの贈り物は、次のとおりです。
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そして、いよいよ彼女を地上を送る際、ゼウスは「決して開けてはいけない」と言ってひとつの壺を渡します。
ちなみに、一般的に「パンドラの『箱』」と言われますが、実際当時のギリシャでは日常的に入れ物として、壺が使われていました。ギリシャ神話がラテン語に翻訳される時に、壺→箱に変わってしまったようです。
パンドラは、地上で暮らすプロメテウスの弟、エピメテウスの元に行きます。
このきょうだいの名はそれぞれの性質を表しています。
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プロメテウスには、ゼウスがなにか仕掛けてくることがわかっていたのでしょう。エピメテウスに「ゼウスからの贈り物は決して受け取ってはいけない」と言っていました。しかし、神々の総力を結集して作られたパンドラの魅力にエピメテウスは虜になってしまい、彼女と結婚します。
しばらくして、パンドラは、ゼウスから持たされた「絶対に開けてはいけない壺」を開けたくて仕方なくなりました。ゼウスに好奇心をプレゼントされているのですから、当然の反応です。壺を開けてみたところ、中から、ありとあらゆる災難が飛び出して、世界中に散らばってしまいました。
ギリシャ神話のパンドラの箱のなかにはいっていた災いは何?数は?
この時世界中に飛び去っていった災いは次のようなものです。
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このとき壺に入っていたものは何だったのかはいろいろな伝承があるようです。よって、数もわかりません。
また、最後に残った「エルピス」をどう訳し解釈するかで、物語の意味も大きく変わります。
1.「エルピス=希望、エルピスが残って良かった」バージョン
これは一番良く見られる解釈だと思われます。
最後に壺の底に「希望」が残っていたために、ひとはどんなに災いがあっても、決して希望を失わずに生きていける、という捉え方です。
私が子どもの頃に読んだ神話もこのタイプでした。物語的にもシンプルで、子どもにもわかりやすいストーリーだと思います。
2.「エルピス=希望、エルピスが残って悪かった」バージョン
そもそも、ゼウスは壺に災いを詰めてパンドラに持たせました。ということは希望も災いだった、という捉え方もできます。ひとの元に希望があるからこそ、いつ終わるかわからない困難にずっと立ち向かっていかないといけない、かなわないことを諦めきれずにずっと追い続けてしまうという苦しみを持つことになったという解釈です。
「希望」と聞くと、ポジティブなイメージが思い浮かびますが、たしかにこのような意味で捉えると災いにもなりえます。
3.「エルピス=予兆、エルピスが残って良かった」バージョン
ギリシャ語の「エルピス」をどう訳するかによって物語の解釈が変わります。エルピスを「予兆」と訳すと、「予兆」が取り残されたことで、ひとはどんな災いの中でも、良い方向に変わっていく予兆を感じることができるという解釈です。
4.「エルピス=予兆、エルピスが残って悪かった」バージョン
予兆、つまり先を見通す力が外に出られなかった、ということで、ひとは未来を知ることができず、多くの災いにあいながらも、手探りで進み続けなければいけない、という解釈です。先がわからないという意味では2番めのバージョンに似ています。
あなたはどのバージョンがしっくりときますか?