ギリシャ神話のアキレスとは
アキレス(アキレウス)はギリシャ神話に登場する英雄です。ラテン語読みでアキレスとなります。アキレスが主に登場するのは、ホメーロスの抒情詩、「イーリアス」の主人公としてです。
しかし、私達にとっては「アキレス」といえば「アキレス腱」という言葉が一番身近なのではないでしょうか?
「アキレス腱」はアキレスの名前から取られています。「アキレス腱」は踵骨腱(しょうこつけん)ともいう、足首の後にある腱のことであり、また、「強いものがもつ弱点・急所」としての比喩表現としても用いられます。
今回の記事では、どうして「アキレス腱」にアキレスの名が使われるようになったのかを明らかにしたいと思います。また、アキレスが活躍する「イーリアス」の内容と、「イーリアス」以後のアキレスの最期について書いてみたいと思います。
ギリシャ神話のアキレスが不死身(弱点あり)となったいきさつ
アキレスは、プティア王ペレウスと海の女神ティティスを父と母に持つ、半神半人です。
余談ですが、この海の女神ティティスには、ゼウスやポセイドンも求愛していました。しかし、ティティスの産む子どもは父親の業を超える存在となるだろうとの予言があり、ゼウスとポセイドンは辞退します。
アキレスの母ティティスは、アキレスを不死身にしようと、冥府の川ステュクスに彼を浸しました。この時、ティティスの手はアキレスのかかとを掴んでいたために、水に浸からなかったかかと部分は不死とはなりませんでした。
アキレスはその後、無双の英雄と成長しますが、不死とならなかったかかと部分がアキレスの運命を大きく左右することになるのです。このエピソードが、「アキレス腱」が「強いものが持つ弱点・急所」の比喩となったゆえんだと言われています。
ギリシャ神話のアキレスの活躍と最期
アキレスが主人公である「イーリアス」はギリシャ最古の長編抒情詩で、全24巻あります。
内容は、ギリシア軍対イーリオス軍による、トロイア戦争10年間のうち10年目の約50日間の事が書かれています。アキレスは、母のティティスから「トロイア戦争に参戦すれば命を落とす」と予言され、戦争には参加しないように隠されていたのですが、とある事情で戦争に引きずり出されていました。
「イーリアス」の舞台である、トロイア戦争10年目のある時、アキレスの属するギリシア軍の総大将アガメムノーンに、アキレスお気に入りの捕虜の娘を奪われます。これに怒ったアキレスは戦線を離脱。神の加護を失ったギリシア軍は劣勢になってしまいます。
みかねたアキレスの親友パトロクロスは、アキレスの鎧を借り、アキレスになりすまして参戦、一時は戦況を盛り返します。しかし、パトロクロスは、イーリオスの王子であるヘクトールに倒されてしまいます。パトロクロスが倒されたことを知ったアキレスは、嘆き悲しみ、ヘクトールに復讐するために再度戦場に戻ってきます。そしてついに、ヘクトールとの一騎打ちとなり、勝利します。
それでもアキレスの怒りは収まらず、ヘクトールの亡骸を街内に晒し続けます。これを嘆いたヘクトールの父プリアモスが、アキレスの元を訪れ、お互い大切な存在を戦争でなくしてしまった悲運を慰め合い、アキレスはヘクトールの亡骸をプリアモスに返します。ここまでが「イーリアス」のお話です。
その後も、アキレスがギリシア軍を率いて戦いますが、急所のアキレス腱をイーリオスの王子パリスに弓で射られ、それが原因で命を落としてしまいます。英雄の命を奪ったものが、唯一の弱点、アキレス腱だったのです。